仕事を知る
このプロジェクトの顧客(クライアント企業)は、全国で年間数十回という頻度で大規模な展示会を開催しています。
この事業には、顧客企業内の様々な部署が関わっているため、部門間の連携を含めた事業運営が年々複雑になっていました。一方、重要な業務を担っていたご担当者が退職する度に、残った社員に負担がかかったり、そもそも「その人しかわからない」「その人が退職するとノウハウが残らない」など、仕事が属人的になっていることも問題でした。
その状況を何とか改善したい、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)として外部の企業に任せて効率の良い仕組みを作りたい、というご相談をいただき、当社がご支援することになりました。
顧客の大まかな課題をお伺いした後は、まず業務の可視化(現状がどうなっているのかを把握すること)を行います。
ここで驚かされたのは、顧客の社内において、この事業の関係者がいくつもの部門に存在し、各部門間のコミュニケーションに非常に多くの負荷がかかっているということでした。
例えば、展示会というのはブースを出展する企業(出展企業)と来場者のマッチングの場なのですが、出展企業を担当する営業部門と来場者の集客を行うプロモーション部門は別々に存在します。各部門にも複数名の社員がいらっしゃいますので、部門間で「10人 対 50人」のコミュニケーション(それぞれの部門の受注・集客状況の確認)が交錯するなどの負荷がかかっていました。
これはほんの一例で、同じような部門横断的な課題が山積していたのと、そもそも一つ一つの業務フロー(仕事の流れ)がどうなっているのか、顧客の社内にも全貌を把握されている方がいらっしゃらなかったため、当社が自ら紐解いていく必要がありました。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)プロジェクト全体の流れとしては、業務の可視化→再設計(効率化された業務フローを組み立てる)→BPOとして当社が顧客に代わって運用していく、という進め方が基本になります。
まずは業務の可視化を具体的に進めるため、顧客社内のあらゆる関係部門のミーティングに参加させていただき、「どの部門の誰が」「何をしているのか」「何が事業運営上のキーとなる要素なのか」を理解し、顧客とディスカッションしながら整理していきました。当然、部門間で異なる考えを持っていることもありますので、論点を一つ一つ整理していきました。
手間も時間もかかる工程なので、プロジェクトとして「いつまでに何をするのか」を都度、顧客とも確認しながら取り組みをリードしていきます。まるで一本一本の糸をたぐり寄せていくようなプロセスでした。
業務の可視化によって、解決すべき課題が具体的になったところで、業務フローを再設計していきました。
例えば、部門間のマンパワーに頼るコミュニケーションは、関係者が必要な情報にいつでもアクセスできるような、情報をモニタリングする仕組みに置き換える、といったことです。
時間と予算が限られていることと、ある程度の柔軟性を確保するため、いわゆる高額なパッケージソフトではなく、EXCELを含む普段使っているようなアプリケーションをベースにモニタリングの仕組みを作りました。
また、どうしても人と人とのコミュニケーションが発生する問い合せ等もあったため、当社社員がその一次対応や交通整理をする役割を新たに設け、顧客のご担当者の日々の負担を軽減する業務フローに移行しました。
今だからこそ言えるのですが、当社として未経験のITリテラシーが必要なシーンがありました。それでも何とか実現していくことが当社の強みでもあるので、我々も学びながらキャッチアップしていきました。
無事に当社のBPO運用がスタートし、顧客からは「ニューズベースさんのおかげで属人化を脱して効率化できた」「もっと早く御社にお願いすれば良かった」「もっと広い範囲でBPOを相談したい」といった言葉が出るほど、効果を実感していただきました。
本プロジェクトからの学びとしては、今回の顧客に限らず大規模な会社になるほど、どうしても組織は縦割りになって部門間の歪みや問題が起こるということ、そして当社のように解像度高く業務改革プロジェクトを推進できる存在が求められているということです。
今回の経験を活かして、より多くの企業のお力になれるよう精進していきたいと考えています。
このプロジェクトの顧客(クライアント企業)は、経済的な支援が必要なご家庭に、助成事業(助成金/支援金の給付)を行っています。
運営事務局が希望者から申請を受け付け、審査を通過した方に資金をお支払いし、それが適切に使われていることを確認していくという福祉性の高い事業となります。
元々は別の委託先へ一部の事務局業務をアウトソーシングされていたのですが、より幅を広げた業務改革を実現するため、当社へお問合せいただきました。
ご担当者は、その当時の委託先への不満も含めて様々な問題意識をお持ちでした。例えば、「言ったことしかやってくれない受け身のスタンス」「新しい提案がなく進歩がない」「今、社員が行っている仕事もアウトソーシングしたい」といった内容です。
打ち合わせを何度か重ねる中で、ある日ご担当者から「実は、こんなことも考えていまして・・・」というように、それまで明らかにされなかった本音の話を聞く機会がありました。
裏を返すと、顧客の期待を表面的ではなく本音ベースでしっかりと理解することが、このプロジェクトの成功に不可欠であると感じました。当社へのご依頼の背景には、既存の委託先への不満があったため、私たちは同じことを繰り返してはいけないと強く感じたのもこの頃です。
また、この事業は多くの役職者の方が関わっています。法人としての方向性、管理職の方が部下の方に期待していること、実務を担う方が肌で感じる課題など、問題意識は当事者によっても異なります。関わる人たちの期待をどう形にしていくか、ということに頭を悩ませました。
一般的にBPOのプロジェクトで起こりがちなのは、顧客の期待値(こういうことが実現できる、こういうことをやってくれると思っていた)と、運用開始後の実態のギャップ(もっとやってくれると思ったのに違っていた、もっと楽になると思ったのに違っていたetc.)です。これは顧客の満足度を下げることになります。
BPOのプロとして事前に期待値をしっかりとすり合わせ、ギャップを埋めながら進めていくことを大切にしました。
まずは顧客の社内関係者の全員に丁寧なヒアリングの場を設けました。当社の窓口になるご担当者だけでなく、その方のもとで実際に手を動かし運用している現場の皆さん、そしてより上層部の会社方針も理解し、それに対して当社のBPOはどうあるべきかを社内でも徹底的に議論していきます。
顧客にとって、初めてアウトソーシングとして委託する業務もあったため、顧客自身もそれを言語化したり切り出すことに当然ながら慣れていません。
口頭のやり取りだけではお互いの認識にギャップが出ますので、ヒアリング内容をもとに具体的な資料(※)を作り、それを見ながら顧客とさらにイメージをすり合わせていきました。
顧客の要望の中には、どうしても予算やリソース上、対応が難しいものも出てきます。その際は、あやふやにするのではなく原点に立ち返り「今回、最も優先したいことは何なのか」という観点で顧客と話し合うことが大切です。
要望には耳を傾けつつ、決して言いなりではない、パートナーとして伴走し、チームを作り、無事に当社がBPOとして顧客の代わりに事務局を運用していく形がスタートしました。
やはり、どれだけ顧客と本音で話ができるかが大事だと痛感しました。本音というのは、相手の話を引き出すことはもちろん、当社として感じたことや気付いた違和感を率直にお伝えすることも含みます。
おかげさまで、このプロジェクトは高い評価をいただき、顧客からは「とても親身に、同じ目線で物事を考えてくれて助かります」「課題解決に向けて、一緒に伴走してくれるので心強い」という言葉もいただきました。
このプロジェクトの顧客(クライアント企業)はグローバルに事業展開するITデバイスメーカーです。商品であるITデバイスの新しい価値や世界観を伝えるイベントを毎年開催しており、当社はコロナ前からご支援しています。
当社にお声がけいただく前は、顧客のご担当者がほぼ一人でこのイベントを取り仕切っていたため、非常に大きな負荷がかかっていただけでなく、少ない時間と人手でどうしても実現できることが限られてしまう状況でした。
当社がご支援する領域としては大きく二つあります。1つはイベント制作(イベントの場づくり)、もう1つが事務局アウトソーシング(イベントに参画する多数の関係者へのご案内や各種手続きの窓口業務など)です。
元々はリアル開催のみのイベントでしたが、コロナ禍になってからは、世界に向けたオンライン配信も組み合わせたハイブリッド開催へ移行しました。
1社だけのセミナーとは異なり、展示会形式なので多くの関係者との調整が必要でした。具体的には、展示ブースを出す出展企業(約20社)、セミナーに登壇する講演企業(約30社)、そして当日は来場者やオンラインでの視聴者がいます。
当初は関係者への事前説明などを一律かつ簡素に進めていく予定だったのですが、想定外に関係者の皆さんの熱量が高く、こだわりも強く、「一律ではなく個別の打ち合わせで細かくすり合わせしたい」という要望をいただき、1社1社と複数回の打ち合わせを重ねていくスタイルに路線変更せざるを得ない状況となりました。
多数の関係者と膨大な量の打ち合わせをしながらプロジェクトを進行していきました。決して楽ではありませんが、当社としても「顧客や関係者と一緒に、良いイベントを作っていきたい」という思いがありましたので、覚悟を決めました。
また、2020年にコロナ禍となってからは、リアルイベントは会場の人数制限があり初めてオンライン配信も手がけました。顧客だけでなく当社にとっても未知の領域で、手探りで準備を進めていきました。
関係者とのやりとりについては、事務局アウトソーシングの一環でオペレーションの自動化も行いました。
例えば、出展企業の情報について、以前は顧客のご担当者が申込書から管理システムにコピー&ペーストしていた業務をITツールの導入で自動化し、100時間以上の工数を削減できたというフィードバックもいただきました。出展企業や講演企業との打ち合わせでは、社長様がカウンターパートとして打ち合わせに参加されるケースもあり、タフなご要望もありつつ、非常に刺激的でした。
制作の打ち合わせでは、具体的にはこのようなことを決めていきます。出展ブースをどのようなデザインにするか、物理的に限られた空間でどう表現するかの設計、具体的にいくらで実現できるのか(見積り)、細部の調整など多岐に渡ります。
一方、これらを実現するには、当社だけでなくパートナー会社と呼ばれる専門会社との連携が欠かせません。施工、デザインなどは当社が顧客の要望を明確にしつつ、各パートナー会社とも打ち合わせをして具現化していきます。
出展企業や講演企業との打ち合わせで心がけていたことは、曖昧な表現や要望をそのままやりとりするのではなく、具体的な資料・例・情報を元に会話をしていくことです。相手の頭の中のイメージと、実際にできあがったものが食い違わないように、期待値を合わせていきました。
このイベントではおかげさまで高い評価を得ています。毎年当社にリピートでご依頼いただくことに加え、顧客が関連する他のイベント制作案件の引き合いもいただくようになりました。
このプロジェクトを通じて、顧客のお困り事を積極的に引き受けて何とか形にしていく「伴走力」こそが当社の強みであり、存在価値なのだと再認識しました。