全国に拡大中!政府も推進する窓口業務委託の最新事情

アウトソーシング

企業における業務の一部または全部を、外部業者へ委託する『業務委託』は多くの企業が導入している経営手法の一つです。手間のかかる間接業務や自社で賄うことが難しい専門業務など、自営でおこなう必要のない業務を外注すれば、企業は貴重な経営資源をメイン業務に費やすことができます。

近年では、外来者と直接対応する『窓口業務』のアウトソーシング化が強まりをみせています。内閣府においても、窓口業務の民間委託を推進・導入し、数多くの自治体でその事例や成果が報告されています。今回は、窓口業務の外部委託における最新事情と、そのメリット・デメリットを解説します。

目次

1.窓口業務を委託した企業・団体事例集

2. 窓口業務の民間委託を導入した自治体例

3. 窓口業務を委託する理由

4. 窓口業務のメリット・デメリット

5.まとめ






1.窓口業務を委託した企業・団体事例集

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総務省では、事務業務の効率化や利用者サービスの向上を図るため、地方公共団体の『窓口業務』に関して民間事業者に委託する動きを進めています。各市区町村の役場窓口において、届出の申請や証明書の交付、発行業務を民間事業者でおこなう自治体が多く報告されるようになりました。

窓口業務を外部委託することで、各自治体は膨大な事務処理による人材補強や、職員の適正配置、さらに民間事業者のノウハウを活かした公共サービスの質向上やコスト削減といったさまざまな効果の実現を目指しています。もちろん、外部の委託業者が自団体の業務をおこなうということは、組織の機密事項や取り扱う個人情報に触れる可能性があるため、情報漏えいリスクが懸念されます。そこで総務省では、地方自治体における窓口業務のうち25業務を選定し、民間事業者に業務委託できる窓口業務の範囲を設定しています。

平成30年5月に更新された、総務省行政管理局公共サービス改革推進室報告の『窓口業務の民間委託にかかる参考事例集』によると、以下10の自治体において、実際に窓口業務を業務委託した事例が詳細に紹介されています。






2.窓口業務の民間委託を導入した自治体例

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・福島県須賀川市
・千葉県市川市
・千葉県船橋市
・千葉県習志野市
・東京都渋谷区
・大阪府池田市
・大阪府八尾市
・大阪府箕面市
・福岡県篠栗町
・熊本県山鹿市

その他にも、環境省や気象庁、国土交通省や日本年金機構、NTT東日本株式会社といった国や独立行政法人、上場企業など数多くの団体で窓口業務の外部委託実績が報告されています。

これら『窓口業務』の業務委託を導入する背景には、各団体においてさまざまな事由があります。それぞれに、一体どのような理由から窓口業務を外部委託することになったのか、各事由を参考にみてみましょう。






3.窓口業務を委託する理由

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窓口業務を委託する理由として下記の理由が大きくあります。

① 新施設開設により窓口数が増加したから
② 繁忙期に人員補強をするため
③ 職員を適正配置するため
④ 職員の超過勤務を削減するため
⑤ 高齢化による特定窓口のニーズ増加対応
⑥ 外部サービス導入による業務の質向上
⑦ 組織のスリム化と適正業務への人材投入
⑧ 安定した窓口サービスの提供
⑨ 窓口業務における新たなアイデアを取り入れるため
⑩ 人件費や教育費などのコスト削減

窓口業務では、勤務時間のほとんどが利用者の窓口対応や電話対応、受付事務に終始し、実務処理の対応が勤務時間外へと回されやすい事情が生じています。限られた人員リソースのなか、増設する窓口の人材配置や、増加する利用者ニーズに対応することに多くの企業や自治体が困難を感じています。そんな中、人手のかかる窓口業務を社外業務に回すことで、業務負担を軽減し、組織のスリム化や事業の効率化を目指す企業が増えています。

さらに窓口業務を外部委託することで、新たな業務手法を導入する機会となり、従来の方式にとらわれず柔軟に業務サービスの質向上やコスト削減効果が見込まれています。

窓口業務の業務委託を導入した2つの具体例をご紹介します。

■千葉県習志野市

<導入の背景>
千葉県習志野市では、医療制度改革に伴う事務業務の増加の対応策として職員の窓口従事回数を削減して業務を円滑化することを目的に、窓口業務の外部委託を開始しました。また、医療制度改革に伴って、事務量が著しく増加していることも背景に窓口業務の委託を導入しました。


<導入の効果>
窓口業務委託の導入によって、正規職員の超過勤務削減されたほか、職員による業務のバラつきがなくなり安定した窓口業務が提供できるようになりました。また、適正な人員配置により来庁者の待ち時間減少効果もあり、事務作業の増大を鑑みて一定の経費削減効果が認められました。
<導入における取り組み>
業務委託における個人情報保護の観点から、システム利用時は個人単位で操作記録が残る仕様に変更をしています。さらに、業務範囲のみ利用できるようシステムをパスワードによって制限化し、受託者と委託者は個人情報保護に関する誓約書を締結することで個人情報の保護対策を徹底しています。

■東京都渋谷区

<導入の背景>
戸籍電算化に伴う職員の配置計画において、変動可能な人員配置として安定した窓口業務をおこなえるよう窓口業務の委託を導入しました。また、職員の超過勤務削減や、人員の適正配置を目指すことも目的としています。
<導入の効果>
業務委託により、繁忙期においても安定的な業務ができるようになり、また業務プロセスを確立したことで判断基準の標準化を達成しました。なかでも、戸籍作成業務においてはかかっていた作業時間が4週間→2週間へ短縮でき、住民票の標準処理業務においては1週間→2日へ業務期間を短縮することができました。
<導入における取り組み>
業務の円滑な引き継ぎをするために、受託者と委託者で定例調整会を実施して職員の直接的な指揮命令がなされないような仕組みを構築しました。また、個人情報保護のため執務スペースでは受託者の私物携帯には専用の透明バッグを使用するほか、執務スペースでの休憩を禁止するなどの対策を講じています。

各導入事例において、職員の超過労働削減や業務時間の短縮効果が見受けられています。また、個人情報の漏えいリスクに対してもハード面・ソフト面ともにさまざまな対策を講じています。






4.窓口業務のメリット・デメリット

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いざ『窓口業務』を業務委託するとしても、やはり直接的な顧客対応を外部に任せることに抵抗感や懸念を持つ企業も多く見受けられます。ここからは、実際に『窓口業務』の業務委託を導入した団体の事例をもとに、そこから見えてくる業務委託のメリット・デメリットをまとめて解説します。

■窓口業務委託のメリット

①人員の適正配置とコスト削減
②職員の超過勤務が改善
③利用者満足度の向上

窓口業務の業務委託によるもっとも見えやすい効果は、窓口職員の人数削減によるコスト削減効果です。わずか1名の窓口職員を削減できるだけでも、他の機関部門へ人員配置できるほか、より安価な人件費で窓口業務を担うことができます。事例の中には、年間で約1,100万円の経費削減を達成した自治体も報告されています。(大阪府池田市)

それにともない、窓口での利用者対応業務に追われ、勤務時間内に処理の終わらずに勤務延長したいた労働時間が削減されることにより、職員のワークライフバランス改善効果も発揮できます。

また、専門委託業者の質の高い窓口業務を導入することで、より利用者ニーズに合った安定のサービスが提供でき、利用者の満足度向上にも貢献します。窓口業務を専門業者に委託することは、コスト改善や業務効率化など企業側におけるメリットだけでなく、利用者にとってもうれしい顧客側メリットも期待できる有益な経営手法です。

■デメリット

①委託先事業者の選定における懸念
②委託業務の切り分けが不明確
③企業機密・個人情報の管理が難しい

『窓口業務』を外部事業者へ業務委託するにあたり、多くの企業や団体で懸念されることの一つが『委託先事業者の選定』です。委託先事業者は、市場競争のなかコストメリットの高さを提案しますが、それらが期待通りのサービスレベルを実現するかどうかは実際に業務を開始するまで不明瞭となっています。

人件費を削減するといえど、あまりに安価なサービスを導入すれば「安かろう悪かろう」というように、粗雑な窓口業務に転じてしまう不安も拭えません。しかし、あまりに高価な委託先を選べば、本来の目的であるコスト削減効果が期待できない可能性もあり、トータルバランスを考慮して委託先検討することが重要です。

また、委託先へ窓口業務を引き継ぐ際も、業務を共有するための的確な指示とプロセスが必要です。多くの企業や自治体では、窓口業務が職員同士にノウハウとして蓄積されていることが多く、業務範囲の明確化やマニュアルの作成が追いついていない事態が発生しています。安定した窓口サービスを提供するためにも、業務の標準化作業が欠かせないプロセスとなります。

そしても最も懸念されやすい、企業機密や個人情報の『情報漏えいリスク』においても入念な対策が必要です。担当業務の切り分けやチェックリストの作成など細かな管理体制を施し、情報漏えいリスクの回避を前提とした業務指導が不可欠です。






まとめ


企業や自治体の貴重な経営資源を、より価値の高い専門業務へ投入するために『窓口業務』の業務委託は高い効果を期待されています。すでに導入している企業や自治体の事例を参考にし、業務委託によるデメリットの回避策を検討することで、窓口業務のアウトソーシング化がもたらす効果を最大限享受してみてはいかがでしょうか。

参考
http://www.soumu.go.jp/main_content/000549585.pdf