ベテランは老害にあらず、年長から不易流行の組織マネジメントを学べ

組織マネジメント

組織マネジメントの基本には、「人をどう動かすか、どのようにして個人の資質を組織化してマネジメントし、仕事を成し遂げ成果を上げるか」にあります。この課題はあらゆる組織に存在しています。

組織の成長に応じたマネジメント手法に悩んでいるなら映画「マイ・インターン」をご覧ください。業績が好調にもかかわらず、組織が成長に追いついていない会社が実行すべき施策を学べます。

《あらすじ》

華やかなファッション業界で成功し、結婚してプライベートも充実、現代女性の理想の人生を送るジュールズ(アン・ハサウェイ)。そんな彼女の部下にシニア・インターンのベン(ロバート・デニーロ)が雇われる。最初は40歳も年上のベンに何かとイラつくジュールズだが、いつしか彼の的確な助言に頼るように。彼の“豊かな人生経験”が彼女のどんな難問にもアドバイスを用意し、彼の“シンプルな生き方”はジュールズを変えていくー。そんな時、ジュールズは思わぬ危機を迎え、大きな選択を迫られることに!

(映画『マイ・インターン』オフィシャルサイトより引用)

女社長ジュールズが経営するアパレルのネットショッピング会社は、創業1年半で業績は右肩上がり、社員は20人程度から220人に増えて急成長しています。しかし、その成長に対して組織としての機能が追いついていかないために、経営経験が浅いジュールズは創業メンバーから外部からCEOを読んではどうかと提案され、自分のマネジメントスキルを否定されたようでショックを受けます。

一方でシニア・インターンのベンは、長年培ってきたビジネスマンとしてのスキルを生かして同僚をまとめあげ、成果を出していきます。ベンの行動や助言がジュールズに示唆を与え、彼女の組織マネジメント力の向上につながっていきます。

ジュールズとベンがとった行動の中から、我々が学ぶべき組織マネジメントの方法を垣間見ることができます。

部下に「イエローフラッグ」を持たせてピンチを早期報告させよ。

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ジュールズは秘書に頻繁に仕事を依頼していました。しかし、業務内容が増え過ぎてしまい、秘書は自身の処理能力が追いつかない状況に陥っています。ジュールズは自身の忙しさのあまりに部下の業務負荷の確認を怠っていました。秘書も自分の評価を気にするあまりに、頼まれた業務を断ることが出来ずに過重な業務量を抱えて途方にくれていました。

この事に気付いたベンは、ジュールズに秘書の業務のキャパシティが完全にオーバーしていることを告げて、自らサポートをする事を申し出ました。

このシーンは、「部下に仕事を依頼する時、自分の都合ばかりで部下の都合を置き去りにしたマネジメントをしていないか」という問題を提起しています。

確かに、自分のタスク処理能力を越えてしまった場合は、部下の方から自発的に「これ以上の仕事は抱えられません。」と言うべきかもしれません。

しかし筆者は、上司こそ部下の抱える現在の仕事量と内容を確認し、部下の処理能力を考慮した上で、業務を依頼するべきだと考えます。なぜなら、部下の方から「無理だ」と言う事はとても勇気がいることだからです。

コーチング研究所(CRI)がまとめたアンケート調査では、「上司と異なる意見を持った時に、あなたは自分の意見を率直に言えますか」という質問に対して、「いつもしている」と答えた社員は、課長クラスで21%。一般社員では、わずか6%しかいませんでした。

映画では、ベンが助言したことで、ジュールズは秘書の業務負荷の高さを理解することが出来ました。その結果、秘書が抱える業務負荷の改善が出来ました。

もし、あなたの職場で部下から上司に自分のピンチを伝え難い雰囲気があるならば、ピンチを共有しやすい環境を作る「イエローフラッグ制度」をオススメします。

この制度を採用することで、部下からの早めのSOSを受け取る事ができます。詳しくは拙著『告げるは恥だが役に立つ「イエローフラッグ」のすすめ』をご覧下さい。

マグネット・スペースを創出せよ

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70歳を過ぎて未経験のEC業界にインターンとして働き始めたベンですが、彼は持ち前のコミュニケーションスキルがありました。加えて人生経験の豊富さから社内での相談役になり、彼を中心として社内のコミュニケーションが活発になります。

このシーンは、社内コミュニケーションの活性化にとって、人と人とのハブとなれるような人物、または場所の重要性を提起しています。

社内のコミュニケーションを活発にするには、「マグネットスペース」と呼ばれる自然と人が集まってくる空間の設計が必要です。なぜなら、自然と人が集る場所を作ることは、今まで関わることがなかった人と人とがつながるきっかけとなり、新しいコミュニティが生まれるからです。

職場の雰囲気を変える必要があるならば、人が集まる「マグネットスペース」を作るべきです。例えば、部署に関係なく、気軽な交流を促すためにランチミーティングやフリーアドレス制を採用することも有効な手段の一つです。普段は直接やりとりすることの少ない社員同士が親睦を深める機会を創出できます。

現場のことは現場に聞け

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ジュールズはベンに社用車の運転手をするように依頼します。その際にジュールズは、自分が考えている目的地までの最短距離で車を走らせようとして道順を細かく指示しますが、ベンはその道順を無視して、ジュールズが指示した道順よりも早く目的地に到着します。ジュールズは結果的に目的地に早くついたことを喜びます。この出来事をきっかけにして、ジュールズはワンマンであった自分の仕事の取り組みを改めて部下にも意見を聞くようになります。

このシーンは、「自分のやり方に固執するあまり、部下のより良い意見をないがしろにしていないか」という問題を提起しています。確かに、経験値も立場も自分より低い部下の意見は間違っているかもしれません。

しかし、現場業務から離れている上司の場合は、自らの考えやこれまでのやり方だけに固執せず、部下からの提言を取り入れるべきではないでしょうか。

なぜなら、現場業務から離れている上司よりも、現場で業務をしている部下の方が、現在進行形で問題に向き合っており、実際の業務状況に合った課題解決方法や手順を考えている可能性が高いからです。

ジュールズは自分のやり方が正しいと思い込んでいました。しかし、部下の話に耳を傾けるようになった事で、より良い解決法を見つける事が出来ました。さらに部下からの意見も柔軟に受け入れることの出来る経営者として評価が高まりました。

プレイヤーから離れて、マネジメントに従事している管理職の方ならば、現場にいる部下の意見をとりいれるべきです。手前味噌ですが、部下の意見を汲み取る際の再考に拙著「企業のカイゼンに必要なのは、正しいフィードバック術だ」「経営者とは、正しい質問をする人である。」「業務改善につなげる、部下のネガティブな意見を受け入れる4つの方法」をご参考にどうぞ。

まとめ

この映画は『プラダを着た悪魔』でファッション誌のインターン役をしていたアン・ハサウェイがファッションサイトの女社長をすることでも話題になりました。強面な役どころが多かったロバート・デ・ニーロの優しげな老紳士ぶりにも注目です。全編がコメディタッチで描かれいるので気軽に見れて、組織マネジメントの学びも得られる1本です。

参考文献

 映画『マイ・インターン』オフィシャルサイト

上司に率直に意見を言わない理由第1位は 「伝えても何も変わらないから」:「率直な意見」に関するアンケート結果(No.12)(Hello,Coaching!)