長時間労働は悪者?成果を考慮せずに早く帰っても生産性は上がらない

赤提灯マネジメント

どうも本格的に削減する取り組みをしていくらしい。
来期から残業すると評価が低くなるという噂を聞いた。

だけど、早く帰れと言われたって、案件には対応しなくちゃいけない。
僕自身、ある程度残業することに対して抵抗は感じていない。

会社から売り上げと利益も確保しろ、しかし、残業はするなと言われたら、どうしたらいいか分からなくなってきた。

そんなことを考えながら歩いていたら、赤提灯につられて
今夜もつい、いつもの居酒屋に立ち寄ってしまった。


【登場人物】

佐藤(29才):電子機器メーカー開発 新米係長 
鈴木(50才):製薬会社 海外営業部 営業本部長  


「なるほどなあ、残業すると評価下がるのか。」

「そうなんですよ、鈴木さん。まだ、噂で聞いただけなんですけど。現場の状況を見ずに丸投げされてる気分です…。」

「今流行ってる労働改革ってヤツの一環だよね。」

「ええ、やっぱり去年の年末あたりから、長時間労働が問題になっていますからね。」

「ああ、例の新入社員の女の子の事件だね。」

「本当に働く時間が短くなるのであれば、僕も嬉しいんですが。」

「結局、仕事を持ち帰ってるんだね。」

「比較的なんですけど、僕は長時間労働にそれほど抵抗がないんですよ。もちろん単純に仕事をダラダラと長くする事は嫌いですけど。残業して仕事をこなしても良いと思っている、僕のような人間って結構いるような気がするんですよね。」

「そういう君みたいな人間にとって、残業すると評価が下がるかもしれないってのは問題だよなあ。」

「大問題ですよ!」

「俺はねえ、昨今の労働改革で長時間労働が都合の良い悪者になっている気がするんだ。社会の敵みたいになってないか?」

「えーと。…そうですねえ。」

「そもそも、働いた評価は時間ではなくて、仕事の成果で考えるべきじゃない?」

「確かにそれは言えると思います。」

「いま、政府がやろうとしている労働改革の目的は、ひと言でいうと生産性を上げようぜって事だと思う。これからの日本の少子高齢化からの労働人口の減少、つまり生産量の低下を生産性を向上することによって補っていこうという話じゃない?」

「そうなんですね。でも、具体的にどれぐらいの労働人口が減るんだろう?」

「ざっくりいうと今後10年で労働人口は8000万人から7000万人に減少する試算が出ている。」

「1000万人って東京都の人口くらい減るんですか!?しかし、僕は労働改革って、ブラック企業対策に政府が本腰を入れ始めたのかと思ってました。」

「もちろん、その意味もあるかもしれないが。それは副次的な要素だな。労働改革が進めばブラック企業はかなり少なくなると思うよ。今後の雇用側と労働者側の需要と供給の問題から考えても。」

「働く側の売り手市場が続くと、そうなるのかもしれませんね。好条件と高待遇じゃなきゃ働きたくないって人が増えるとか…。」

「まあ、ブラック企業ってのは、そんな簡単になくならないとも思うけど、その話は一旦置いといて。」

「政府主導の労働改革の話ですよね。」

「そうだった。総理も言ってたけど、働く人が少なくなるんだから、今のままの働き方と生産性だと単純に国力が衰退しちまう。税収も減る。お役人さん達のメシの種が減る。」

「そりゃ、声高に労働改革を叫びますよね。」

「そこで、労働人口減少対策として考えられている対応策が3つあって、労働人口を増やすこと、出生率を高めて未来の労働人口を増やすこと、そして生産性を上げる事。」

「なるほど。」

「長時間労働しているのは、子育てする世代と重なっているだろ?労働時間が増えればその分、家庭の時間がなくなる。労働時間が少なくなれば、出生率も上がって生産性も上がると考えるのは当然といえば当然か。」

「鈴木さん、すごく詳しいですね…」

「こうみえて、勉強しているんだよ。」

「しかし、労働時間を少なくするだけで生産性って上がらないですよね?」

「だから、成果を考えるべきだって言ったんだよ。単純に労働時間を短くしようって話じゃなくてね。君の会社みたく残業禁止だ!って、いきなり時間を短くしてしまうんじゃなくて。生産性を上げる方法を取り入れるのが先だよ。結果として労働時間は短くなるはずだ。」

「成果をあげることを前提に仕事するってのは納得できるんですが、具体的にどうすりゃいいんでしょ…。何か新しいシステムやツールを導入して業務の改善を図ったりするのかな?」

「違うな。その新しいツールやシステムが見つかったとして、今まで1時間かかってたのが45分になるとか、そんなもんじゃない?確かに業務はスピードアップするかもしれないけど。導入にあたってさらに準備期間もかかるだろ?下手すりゃ工数も増えるぜ。」

「うーん。…工数を減らすのか?リードタイムの短縮?」

「そのリードタイムの短縮に近いかな。まずはタスクの棚卸し作業をするといいよ。」

「棚卸しですか?」

「仕事のタスクをモレなく全部抜き出して優先順位をつけるんだ。優先順位のポイントは、そのタスクが成果に結びついているかどうかで判断すればいい。」

「全部のタスクですか?」

「そうだよ。通常業務を全て書き出して時間を測ってみるんだ。そうすると自分の今のタスク処理能力が良く分かる。実際の数字が出ると考えていなかったようなタスク、例えばメールチェックや返信のような成果につながらないタスクに手間取っていたりすることが分かる。」

「成果に直結しないアイドリング時間が明確になりますね。」

「そうだね。ここでもう1点重要なのが、個人ではなくてチームでやることが大事だ。上司と部下、同じプロジェクトメンバーなどでお互いのタスク処理能力を共有するんだ。これで仕事をお願いする時にどんな手順で仕事をしているかお互い理解ができる。」

「確かに個人の裁量で回せる仕事って、そんなに多くないですね。」

「いづれにしても、仕事をする上で周囲とのコミュニケーション大切だ。そして、能率を上げるのも重要だけど、成果につながらない余計なタスクに時間をかけてないかをチェックして、それを減らすことで時間に余裕も生まれる。成果を意識した仕事をする事で生産性も高まるさ。」

「効率性を高めて、能率もあげる事で生産性が高まるってことですね。」

「長時間労働を禁止することは、確かに聞こえが良い。労働者も嬉しいから反対するものは少ないと思う。しかし、労働時間を短縮する事のみに焦点が行き過ぎているような気がするんだよ、俺は。」

「大切なのは生産性を上げて仕事を効率こなして早く帰ることですよね。」

「時間を短縮しても成果がついてこないと意味がない。成果を上げるための方法もセットで労働時間を短縮しなくちゃならないはずだ。」

「思い出したんですが、ある不動産会社が終礼前に“ロッキーのテーマ”を流して残業時間を24%減らしたというニュースを読んだんです。“ロッキーのテーマ”が流れるようになって反射的に社員が早く帰るようになっちゃったってことじゃないですよね?」

「そのニュースは俺も読んだよ。BGMが流れると終礼が行われるように決めて、課ごとに全員の残業や仕事の配分調整を行ったから、生産性が向上して早く帰れるようになったんだろ。俺が言ってたことで実際に効果が出てる企業があるじゃないか。」

「僕も実際にやってみます。」

「ところで佐藤君。君の査定に関わる有効な手立てを教えた俺に、何か思うところはないかい?」

またしても、奢らせられてしまった。
余計な出費が増えてしまったが、今日もおじさんと話せて良かった。


―今日も居酒屋の赤提灯は煌煌と夜に浮かんでいた。

~続く~

本記事は、赤提灯居酒屋で、企業戦士たちの談話を肴に、お酒を嗜むことを趣味とする筆者が、居酒屋で耳にした実話と、仕事上の体験談を、プライバシー保護を目的に編集、再構成したフィクションです。

参考文献

5分で分かる「働き方改革」とは?取り組みの背景と目的を解説(BOWGL)

日本の将来水系人口(国立社会保障・人口問題研究所HP)