会議は踊る、されど進まず。怒れる12人の男たち。

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前回開いた会議がうまくいかなかった。事前に資料を配布しているけど、目を通してくれていない。段取りは悪くないけど、意見も出てこないし、時間が長くなるばかりで、効率的じゃないなあ。

上記のような、会議の成果に対するお悩みをお持ちの方には、映画「12人の怒れる男」がおススメです。会議で成果を出すために必要な心構えとスキルを学べます。

《あらすじ》
父親殺しの罪に問われた少年の裁判で、陪審員が評決に達するまで一室で議論する様子を描く。
法廷に提出された証拠や証言は被告人である少年に圧倒的に不利なものであり、陪審員の大半は少年の有罪を確信していた。全陪審員一致で有罪になると思われたところ、ただ一人、陪審員8番だけが少年の無罪を主張する。彼は他の陪審員たちに、固定観念に囚われずに証拠の疑わしい点を一つ一つ再検証することを要求する。
陪審員8番の熱意と理路整然とした推理によって、当初は少年の有罪を信じきっていた陪審員たちの心にも徐々にある変化が訪れる。


法廷映画の名作として名高い本作は、舞台やテレビで、何度もリメイクが行われています。この作品は会議室のみで展開していく、密室劇スタイルの映画です。

1950年代、アメリカの陪審員制度では、死刑判決には陪審員全員一致の決議が必要でした。

参集した12人の男達は、世代も人種も職業も思想も違います。罪に問われた少年の生死を決めるという究極の選択。彼らの白熱した議論の中から、我々が目指すべき会議の姿を垣間見ることができるでしょう。

傍観者から当事者に意識を変えさせよ

29_(1).jpg本作の主人公陪審員8番(本作では登場人物に名前は付けられておらず、陪審員番号が割り振られています)は、検察の立証に一人だけ疑問を抱き、被告である少年の有罪判決に異を唱えます。

しかし他の陪審員は、そもそも裁判自体に興味がなく、早く切り上げて野球観戦に行きたいと言う者までいて、議論を行う土台ができていませんでした。

これは、現実に行われる会議でもしばしば起こる問題です。この問題の原因として、会議参加者の低い当事者意識という点が考えられます。

実際に、800人以上のビジネスマンを対象とした、ミシガン州立大学とミネソタ大学の共同研究によれば、従業員が当事者意識を持てば、仕事の成果が向上するという、正の関係が存在することが伝えられています。

主人公陪審員8番は、早く会議を終わらせて、帰りたがっている当事者意識が低い他の陪審員に「5分で彼の人生を決めていいのか?人の生き死にを5分で?」と問いかけます。

陪審員8番は審議に参加して、国家としての法の決定に関わるという意義と重要性を皆に伝えることで、参画意識に訴えかけ、メンバーを会議のテーブルにつかせることが出来ました。

企業での会議に置き換えるのであれば、「今回の会議は来期の全社目標達成を左右する極めて重要な会議だ。あなた方の所属する開発部門が、顧客接点を担う営業部門に貢献できるアイデアを提案してほしい」というように、会議の意義とゴールを明確に伝え、会議参加者個人の当事者意識に訴えかけることです。

進行役の能力が会議全体の成果を決める

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この映画では、進行役として中学校のフットボールコーチである陪審員が担当しますが、審議の過程で有罪か無罪かで対立する陪審員の意思をまとめることができなくなり、議会の決議という成果に貢献することができませんでした。この陪審員は会議の進行役が持たねばならないファシリテーションスキルが欠如していたのです。

会議で成果を出すためには進行役のファシリテーションスキルは不可欠です。会社での重要な会議で、進行役が適切なファシリテートを出来なければ、次のような問題が出てくるでしょう。

・参加者の目的や意識が統一されない。
・議事内容が整理されない。
・人の意見を聞こうとしない人が出てくる。
・安易に妥協しようとする。
・結論があいまいなまま会議が終わる。

ファシリテーションとは「議論の交通整理をして、参加者の意見の舵取りを行い、中立的な立場で議論のプロセスを管理する能力」のことです。

例えば、営業部門とサービス部門は、意見が対立しがちですが、ファシリテーターである進行役は、「営業部門は契約を取るためには、クライアント側に立たなければならない事」「一つの変更が、サービス部門にとっては、大きな負担になってしまう事」に理解を示し、中立的な立場を維持しなければなりません。

会議の目的は勝ち負けではなく、最適解を導き出すことである

29_(4).jpg陪審員8番は、被告の少年が、治安が悪い地域の出身、移民の子、犯罪歴がある、というバイアスを捨てて、証人の発言や犯行に使われた凶器について、整合性や信ぴょう性が本当にあるのか、メンバーに問うことで、当初有罪となっていた陪審員の判断が無罪へと傾き始めることになります。

このシーンで重要なのは、陪審員8番がバイアスを捨てて、エビデンスに基づいた論理的な検証を行ったということではありません。

重要なのは、陪審員8番以外のメンバーが異なる意見に耳を傾け、今一度全員が納得できる答えを導こうとしたことです。

会議の目的は、意見が正しいか正しくないかの勝ち負けを争うことではありません。皆の知見を集め、意見をすり合わせ“最適な解”を導き出すことにあります。

『一人だけでは洞察力と合理性に限界はある』
ジョン・ロールズは「正義論」の中で、このように述べています。

公正で最適な答えを導くためには、たとえ意見が反対の者でも、有益な意見を唱えたら傾聴すべきでしょう。認識のズレを修正していくためには、長い時間がかるかもしれません。そのためには、普段からのコミュニケーションが重要です。

まとめ

12人の登場人物は、必ずあなたの会社にいる誰かにそっくりなはずです。

名作「12人怒れる男」を鑑賞して、会議とは何かを改めて考えるきっかけにしてみては、いかがでしょうか?

参考文献

「十二人の怒れる男」(wikipedia)

Psychological ownership and feelings of possession: three field studies predicting employee attitudes and organizational citizenship behavior