前人未到8連覇に偉大な師あり -帝京ラグビーに学ぶチームビルド術

社内コミュニケーション

優れたスポーツコーチ術は、ビジネスでも活きる。

米国IT業界で有名な経営者ビル・キャンベル氏は、Appleのスティーブ・ジョブス氏、amazonのジェフ・ベソス氏、Googleのエリック・シュミット氏といった、一流の経営者達が絶大な信頼を寄せたメンターでした。

彼のキャリアスタートは、大学のフットボール・コーチです。ビジネスにおける成功者の中では遅咲きですが、彼は40才から、その指導力とチームビルド力を活かし、活躍しました。

もちろんスポーツコーチ術とビジネスの関連性を証明する事例は、キャンベル氏だけではありません。

今回は、日本で最も注目されている指導者の一人であり、史上初の大学ラグビー8連覇を達成した、帝京大学ラグビー部率いる岩出雅之監督のビジネスに活用出来る指導法をご紹介します。

考え、教えて、行動することを促進する

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岩出雅之監督は、2016年の「ジャパンコーチズアワード」にて、その非常にユニークかつ効果的な選手育成方法を理由に、「最優秀コーチ賞」を受賞しました。

帝京大学ラグビー部は、組織形成で強くなったチームと言われています。岩出監督は、「学生に教えるのではなく、考えさせる」ことを重視した指導法を通じて、組織形成を推し進めたのです。

例えば練習中にトラブルが生じた場合、上級生はチームメンバーを招集し、下級生に対して「なぜミスが起こったか」を自分で考えて伝えるように促すことが帝京大学ラグビー部では通例となっています。同じ考えから、チーム内から「学生コーチ」を選び出し、コーチや監督と一緒に練習メニューを決めるといったシステムも取り入れています。

これにより、プレイヤーも、指導する側、される側、2つの視点が得られ、多角的な視野を持つことができるようになります。また、仲間から選出されたという「責任感」に加えて、受け身では得られない「主体的な姿勢」と「やりがい」を持てるようになることも大きなメリットでしょう。

ビジネスにおいても、年功序列の昇進や役職登用にこだわるのではなく、「彼・彼女はどのような経験を積めば長期的に我が社に貢献してくれるだろうか」という視点を持つことが大切です。たとえ部署レベルでの実行が難しくても、プロジェクトベースで自発的にチーム内でリーダーを決めさせるというような施策で応用できるのではないでしょうか。結果として、チーム内の絆、責任感、モチベーションを高める事ができるでしょう。

経験の浅いプレイヤーにマルチタスクさせない

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帝京大学ラグビー部の寮生活では、1,2,3年生が同じ部屋で暮らしています。1年生は二段ベットの上で過ごし、練習後の片付けは、2年、3年が率先してやるそうです。

このような環境を作るのには、もちろん体育会系的な縦社会を緩和して、試合中のコミュニケーションを活性化させる狙いがありますが、理由はそれだけではありません。

この方針には、先輩の世話、雑務、トレーングなどのマルチタスクを、慣れない環境下で奮闘する新入生に強制せず、自身のトレーニングと自己成長に専念してもらえるような環境を提供する意図もあるのです。

帝京ラグビー部に習うならば、プロジェクトチームには必ずベテラン、中堅、新人がセットになるようにアサインして、雑務を新人に押し付けず、先輩後輩が上下関係を気にせずに気軽に話せるような雰囲気を作っていく事が大切と言えるでしょう。

また、新人教育の際には、慣れない職務でタイムマネジメントも上手くいかない新入社員にマルチタスクを課すのではなく、一つの業務に集中して仕事内容を覚えてもらうことで、効率的に新人を育成出来るでしょう。

リーダーシップは地位ではなく、行動である

6_(2).jpg上記2つの指導方法の根幹にあるのは、「指導者がプレーヤーに合わせて自分自身を変える必要がある」事に気がついたからだと、岩出監督は述べています。

この気付きを得る前の岩出監督は、ご自身が選手時代に経験した、上下関係を重視した旧態依然の指導法を採用していました。

しかし、「ゆとり」や「さとり」世代と評されるような選手達に、この指導法はうまく浸透しなかったと言います。前人未到の大学ラグビー8連覇を達成した偉人でさえも、成績が振るわなかった年月を過ごした結果として、「指導者がプレーヤーに合わせて自分自身を変える必要」に気付き、変化を決意したのです。

ビジネスシーンでも、年齢を重ねていくと、過去の自分の成功体験や方法論に固執し、自分が慣れていない新しい世代、新しい技術や新しいサービスに距離を置いてしまいがちになります。

進化論を提唱したダーウィンは言いました。

「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。
唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である」

指導者は常に新しい知識を吸収して、新しいチャレンジを行わなければなりません。

組織はリーダーの力量以上には伸びない

ラグビーは団体球技スポーツでは珍しく、コーチや監督は試合中に選手交代以外の指示は出せません。これも、選手の自主性を高める要因の一つになっていると考えられます。ビジネスにおいても、常に上司の指示を仰いでいては個人の成長は望めません。

アサヒビール中興の祖と呼ばれ、「スーパードライ」を発売した樋口廣太郎氏がおっしゃった「管理職十則」にもありますが、「リーダーシップとは部下を管理することではなく、発想を豊かに持ち、部下の能力を存分に引き出すこと」にあります。

組織を活性化するには、良き指導者が必要になります。優秀な指導方法は、スポーツでもビジネスでも、同様に通用するのではないでしょうか。

参考文献

ビル・キャンベル氏が死去--アップルのジョブズ氏やグーグル幹部らの「メンター」(CNET Jpan)

3回第ジャパンコーチズアワード受賞者(Japan Coaches’ Awards)

帝京大学ラグビー部 監督 岩出雅之さん 「破壊と創造」(経済フロントラインBS1)

チームワークとエンジョイで勝てる組織をつくれ!( bizocean )

樋口廣太郎流-仕事十則・管理職十則(独学のオキテ)