その仕事、本当にあなたがすること?職場で正しく「NO」と言う方法

赤提灯マネジメント

このごろ自分の通常のタスクが滞っている。
終業時間ギリギリになってやっと自分の仕事ができるという感じだ。

働き方改革やプレミアムフライデーどころじゃないなあ。

理由は分かっている。
新プロジェクトやら業務改善やらの連日ある会議、
同僚や部下の依頼やフォローで時間が取られてしまうのだ。

自分の職域の範囲外であるような案件もあるのだけど
どう断って良いのか良く分からない。

なにより、人と争うのが昔から苦手だ。

職場に波風を立てるくらいなら
自分が少しくらい割りを食っても仕方がないのかなあ。

そんなことを考えながら歩いていたら、
今日も赤提灯につられて、いつもの居酒屋に立ち寄っていた。

【登場人物】
佐藤(29才):電子機器メーカー開発 新米係長 
鈴木(50才):製薬会社 海外営業部 営業本部長  

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「佐藤くん、最近は新プロジェクトやら業務改善やらで、忙し過ぎやしないか?」

「実は、そうなんです。自分でもこの働き方は非効率だと思います。だけど、僕がやらないと仕事が回らないんで…、やるしかないんです。」

「『智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい』ってヤツだな。」

「ええと、そんな話してましたっけ?」

「夏目漱石を知らないのか君は?要するに、自分がやらなくても良いような仕事を押し付けられていて、困ってるって話だろ。最近の仕事の話を聞くと、どうも君は典型的なNOと言えない日本人だと思ってたんだよ。」

「明治の文豪ですよね、名前くらいは知ってますけど。いや、その、確かにNOと言うのは苦手かもしれないですね。」

「必要な時にはNOと言わないとダメだよ。君もビジネスマンなら、時間が一番重要な資源なんだって事をキチンと認識しないと。時間は自ら確保しなくちゃならんぞ。今みたいにイエスマンをやってたら仕事を溜め込んで、ぶっ倒れちまう。」

「それは、分かってるんですけどね…。」

「今は、働き方改革なんて言われて、これまで以上に同じ時間でより多くの仕事量をすることを求められてるからね。君んとこの会社も社員に早く帰れって言ってるんじゃない?」

「確かに、そうですね。」

「労働時間を効率的に短くするためにも、『NO』ということは大切なんだよ。それも正しい方法で言わないといけないんだけどね。」

「『NO』って言うにも正しい言い方ってあるんですか?そういえば、鈴木さんは、いつも早く仕事上がっているみたいですけど、会議とかはどうしてるんですか?部課長クラスだと会議も多くなりますよね。」

「俺は、参加する会議を選んでる。参加する意義のない会議に呼ばれたら、俺は断るよ。会議ってのは、とにかく時間を食うからね。会議を多くすることは、自分の生産性を下げるだけでなく、他の参加者全員の実働時間を奪って、ひいては企業利益も下げてしまうんだ。」

「参加する必要がないと思ったら、鈴木さんは『俺は参加する意義を感じないから、出席しないよ』ってハッキリ言っちゃうんですか?それは嫌われません?」

「議題と招集メンバーを見て俺が参加する必要がないと思ったら、会議の主催者に『この会議で私の役割はなんだい?』と、聞いてみるんだよ。俺が出席する必要のない会議の場合は、大抵こう返ってくるね『鈴木部長も参加された方が良いかと思いまして』って。」

「それで、なんて返すんですか?」

「実務レベルの話で決裁者の俺が参加する必要性のない場合は『文書で報告してくればそれで良いよ』って答えて、そのあと議事に目を通して疑問があったら、その会議に参加したヤツに後で直接聞くよ。」

「なるほど。参加する前に自分の役割を聞くんですね。そうすると僕は、参加する必要のない会議に出席しすぎていたのかもしれません。役割があった上で参集していた場合は、出席されるんですよね?」

「さすがに面倒くさがりの俺でも、まともな理由があれば会議に行くさ。ただ、会議の主催者が『◯◯さんが鈴木部長を加えろと言ってました』って答えたらそれはまともな理由にはならない。その時はその発言者に同じ質問をする。それで、良い答えがなかったら参加を断るよ。」

「参加しなくてもいい会議に出席しなかったら、最低でも1時間業務時間を短縮できそうですよ!」

「会議出席を断れない心理として、重要な情報を逃してしまいそうな危機感とか、部署のメンバーから取り残されてしまうような疎外感があるんだけど、自分が必要かを論理的に判断しなくちゃならない。」

「生産性から考えると、本来の業務に差し支えたら意味がないですもんね。」

「君はどうも人が良さそうだから、いいように使われちゃいそうだよな。同僚からの依頼とかもホイホイ引き受けちゃうんじゃない?」

「いや、お恥ずかしながら…」

「仲間の仕事を手伝おうとする協働意識は大切なんだよ。それに、下手に頼みを断ったら、チームプレイを乱してると思われてしまうからね。」

「頼みを断った時の気まずさとかを考えてしまって、ついつい引き受けちゃうんですよね。」

「これは、確かに難しい。ただ、客観的に見て、もしその仕事を手伝った時の時間と資源が無駄になると思ったらNOと言うべきだよ。

そのタスクを実行する場合の時間や適切なリソースがない時は、共倒れになってしまう恐れもあるから。」

「なぜ引き受けられないか理由を言って断るって事ですよね。」

「そうだよ。自分のタスクスケジュールを提示して説明しても良いかもね。今は手伝えないけど、調整ができたら後で依頼を受け入れられるかもしれないし。繁忙期でイライラしてる時に『無理です』っていう一言だけじゃ、誤解されちゃうかもしれないから。必ずお互いのスケジュールを確認しあってから断るんだ。」

「同僚はなんとか断れそうですけど、上司の頼みは断りづらくありませんか?」

「上司の頼みを断るのは一番難しい。だけど、こういう場面こそしっかりと断りを入れる必要性があるんだよ。」

「えっと、どういうことですか?」

「部長職をしている俺も含めて、経営に近い人間は、部下にやみくもに同意して欲しいわけじゃないんだよ。部下に求めているのは、部下本来の業務を全うしてもらう事だから上司が突発的に君にタスクを頼んだとして、それで君の仕事に支障がでるならば本末転倒だ。しっかりと意見を伝えないとダメだよ。」

「実は、自分の職域を超えたプロジェクトをまた任せられそうで困っていたんですよね。上司は多分、僕の業務負荷が見えてないんですね。」

「君が今抱えている案件やタスクを上司に見せて、仕事の優先順位を聞いてみたら良いよ。それが君の仕事の質につながってくるんだから。」

「そうですね。上司に話してみます。NOをしっかりと言ってきますよ!」

「そうだな。ところで、俺は今日モロキュウとだだちゃ豆が食いたいんだけど。」

「それは、NOって言っていいんですよね?」

「これは仕事じゃないだろ?」

またしても、奢らせられてしまった。
余計な出費が増えてしまったが、今日もおじさんと話せて良かった。

―今日も居酒屋の赤提灯は煌煌と夜に浮かんでいた。

~続く~

本記事は、赤提灯居酒屋で、企業戦士たちの談話を肴に、お酒を嗜むことを趣味とする筆者が、居酒屋で耳にした実話と、仕事上の体験談を、プライバシー保護を目的に編集、再構成したフィクションです。