デキる部下には灸を、デキない部下には砂糖を―ハモニカ横丁編

赤提灯マネジメント

【登場人物】
佐藤(29才):電子機器メーカー開発 新米係長 
鈴木(50才):製薬会社 海外営業部 営業本部長  

ここは東京、新宿から電車で15分程度にある駅の近くの居酒屋。

赤提灯につられて、今夜もつい立ち寄ってしまった。
週末の夜、この居酒屋でよく会う常連のおじさんと話すのが楽しみだ。

居酒屋の大将から聞いた話によると、それなりに名の通った会社の偉いおじさんらしい。

23(2).jpg「久しぶりだね、なんだか、最近会わないね。仕事忙しいのかい?」

「ええ、おかげ様で忙しくやってます。」

「最近、部下ができた事もあって、今日もフィードバックやら、尻ぬぐいやらで大変ですよ。なんか、出世したってよりは、出世させられたって感じです。」

「まあ、君の給料があがった分は、部下の面倒みる分なんだから、せいぜい給料泥棒にならないように仕事しないとな。」

「そういえば、部下に真面目で優秀なんですけど、仕事に完璧主義なヤツがいて、ちょっと困ってるんです。

報連相が欲しいんですけど、『まだ出来てないので、完成させてから報告します』ってきかないんですよね。こっちはその途中経過がみたいんですけど。」

「そいつは、仕事はデキるヤツなの?」

「はい、同期に比べたら優秀ですね。まあ、納期は守るし、あがってくる仕事も悪くないんで、問題ないのかも知れないですけど。」

「いや、それは問題だぞ。」

「どうしてですか?」

「自分の仕事の完成度が納得いかないから、途中の成果を見せたくないってヤツはまず伸びないな。

まあ、そいつは同期に比べたらそこそこ優秀でプライドも高いのかもしれない。馬鹿な上司だったら、『アイツは勝手に育つ』とか評価されるタイプかもね。」

「いや、まさにそういう評価されてます。」

「自分が優秀だって勘違いしちゃうのかもしれないな、ある程度自分で仕事覚えちゃうんだろ、そいつは。

新人に、自分は仕事できるって、早い段階で思わせちゃダメだよ。」

「プライドばかり高くなって、周りから浮いちゃうってことですか?」

「いや、そうじゃない。プライドは高くて結構だし、周りから浮いちゃっても、仕事できたらそれでいいんだよ。

問題なのは、そういうヤツって、ある程度で成長が止まっちゃうんだよ。下手すると、いつのまにか、他の同期より使えないヤツになっちゃうかもしれない。

周りが自分より下だと思ってるから、周りに聞く癖がつかないだろ。自分が優秀だと思っているから。

それで間に合ってる段階だと、そいつのヤバさが分からないんだな。大きいプロジェクトに参加した時に、そいつのヤバさが現われてくるよ。」

「チームプレイさせた時に、孤立しちゃうんですかね。」

「それもあるけど、その時には周りより成長していない恐れがある。」

「どうすればいいんでしょう?」

「ちょっと優秀なヤツは、早めに、もっと優秀なヤツと仕事させるんだ。そこで、鼻っ柱折ってもらった方がいい。自分もまだまだだなあと思って貰って、優秀なヤツに沢山質問する癖をつけてもらうんだよ。」

「仕事って、結局トライアンドエラーで覚えて成長していきますよね。」

「そうそう、正しい方法で失敗して、そっから立ち直ってもらわないと人って成長しないんだよ。新人で自分が優秀だって思ってるヤツは、トライエンドエラーができないというか、慣れていないんだな。だから、一回転び方と起き方を学んでもらう必要があるよ。

君の部下に、要領悪いけど、無駄に行動力あってよく質問してくるヤツいない?そいつは、少しでも成長したら、大げさに褒めてやると良いよ。そういう、一見するとデキないヤツが大きいプロジェクトに入って優秀なヤツに交じってると、いきなり成長してたりするんだよな。」

「それ、割りと僕の事かもしれません。」

「ああ、やっぱり君はそっちのタイプか。まあ、しかし、その優秀な新人君は、君の未来の上司かもしれないし、大切に育てなきゃならないよ。」

「やめてくださいよ!」

「よし、獺祭のもう。君のおごりだからな。」

またしても、奢らさせられてしまった。
余計な出費が増えてしまったが、今日もおじさんと話せて良かった。


―今日も居酒屋の赤提灯は煌煌と夜に浮かんでいた。

~続く~

本記事は、赤提灯居酒屋で、企業戦士たちの談話を肴に、お酒を嗜むことを趣味とする筆者が、居酒屋で耳にした実話と、仕事上の体験談を、プライバシー保護を目的に編集、再構成したフィクションです。

《赤提灯シリーズ》
新卒は、俺の未経験の22年を生きた先輩 赤提灯マネジメント論 西荻編