憧れの上司は、助言はしても、手助けはしなかった

組織マネジメント

「どのようにして部下と信頼関係を築いてチームの目的を達成していくのか?」

これは、中間管理職者の永遠の課題と言っても良いでしょう。

そんな管理職者が、マネジメントに悩んだならば、いますぐ「機動警察パトレイバー2 the movie」を観て頂きたい。アニメ作品と侮るなかれ。この映画は、どのように部下を巻き込んで、目標を達成していくかが学べる、不朽のマネジメント書とさえ言えるのです。

《あらすじ》

2002年冬。横浜ベイブリッジに謎のミサイル投下…!

報道はそれが自衛隊機であることを告げるが、該当する機体は存在しなかった。これを機に続発する不穏な事件は警察と自衛隊の対立を招き、事態を重く見た政府は遂に実戦部隊を治安出動させる!! 東京に偽りの〈戦争〉を再現した恐るべきテロリストを追って、第2小隊最後の出撃が始まる!

この映画の主人公である「後藤隊長」は、警察という巨大な組織に所属する、中間管理職者です。一癖も二癖もある、決して優秀とは言えない、個性的なメンバーを率いて困難を乗り越えていきます。

メンバーの力を引き出し、本来の力では、とても及ばないような大きな目標を達成した「機動警察パトレイバー2 the movie」の後藤隊長と第2小隊から、中間管理職者の部下の生かし方を学びましょう。

使命感を持たせよ

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最終局面で、隊長と行動を共にすると、罷免どころか、警察である自身が逮捕されるかもしれない状況で、部下達は決死の覚悟で結集します。

「命令も強制もしない、しかし、メンバー自らが多少無理をしてでも進んで仕事をやってくれる」。この状態が、管理職者の望む理想のチームなのではないでしょうか。

このようなチームを創り出すには、メンバーに仕事に対する『使命感』と『当事者意識』を与え、良い意味で、「この仕事をやり抜くしかない!」と思えるようなマネジメントが必要です。成果を上げるためには、言葉が悪いかもしれませんが、部下にやめるという選択肢を与えてはなりません。

「やめる選択肢を与えない」とは、もちろんブラック企業化しろといった話ではございません。金を稼ぐためだけでは得られないような、使命感を持たせた上でタスクを任せるということです。

「これは、難しい仕事だが、会社の命運、そして君のエンジニアとしての今後のキャリアとプライドに関わってくる仕事だよ。」

ただ単に困難な仕事を「仕事だから」と押し付けるのと比べて、部下はどのような気持ちになるでしょうか。

部下の職業人としてのプライドをくすぐり、当事者意識とモチベーションを引き出すことを一言一言に意識しましょう。

独自の情報と知見で組織をリードせよ

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後藤隊長は、松井刑事という独自の情報源を持ち、組織内外を誰よりも把握して、テロリストの攻撃を予見しながら、戦力を残しつつ最終局面を迎えます。

リーダーとして、「鳥の目」、「虫の目」、「魚の目」の3つの視点を持つことが必要不可欠であると言われることを、皆様もご存知かもしれません。

「鳥の目」は大局を見極める力、「虫の目」は現場で起きている事象を把握する力、そして「魚の目」は変化を捉える力を指します。言うまでもなく、組織を先導する立場として、どの視点も欠けていてはなりません。

そして、この3つの視点を持つために欠かせないのが、ヒトモノカネと並んで重要な「情報」ですが、意思決定に忙しい管理職者が、ただ闇雲にSNSや新聞記事から情報を集めては、組織全体に影響を及ぼしてしまいます。

そのため、後藤隊長がそうしたように、人の上に立つ者は、優秀な人材を自身の「参謀」として配置することが極めて重要です。

この参謀ないし効率的な情報収集の役割は、今後AIによって自動化や効率化が進むことも期待されています。自身の限られたリソースを、最も効率的に活用する技術の進歩に、リーダーが敏感になりすぎるということはありません。

組織の誰よりもリスクテイカーであれ

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劇中にて、後藤隊長は保身と責任のなすり付け合いをする上層部に愛想を尽かし、テロリストの脅威から「市民を守る」という警察官としての本来の目的のために、独断で事件の解決に乗り出します。

「何もせず手をこまねいていて被害が現実の物となってしまったら、やっぱり俺たちは犯罪者だ。どっちがいい。」

後藤隊長は、上層部に相対することに怖気づきそうになる同僚に、このように語りかけます。

目的達成の為には、重要な局面でリスクをとることを恐れないこと、をマネージャー自身が忘れてはいけません。『リスクを取れる管理者になる』ということは、部下やプロジェクトの責任を負い、まさかの場合の時に叱責や罰則を受けるという事ではなく、『リスクをとり、リターンを求める』ことにあります。

日本企業では、特に管理者層は、リスクをとる事を恐れます。それは、単純に責任を押し付けられるのが怖いというのが、その理由でしょう。

しかし、大きなリターンを生むには、必ずリスクが発生します。大きな利益を上げるほど、大きなリスクが伴います。押し付けられ、取る必要のない責任と、利益の源泉になるリスクを、間違わないように判断していくことが、マネージャーとしての責務です。

「俺は強制や命令は嫌いだからね」

後藤隊長は命令も強制もしないかわりに、部下の配置に気を配り、チーム内での相互フォローを最大限にし、時折示唆することでチーム内の自主性に指向性を持たせるマネジメントを行っています。

部下はいつのまにか巻き込まれてしまいますが、その仕事はチームの能力を最大限に生かして成功し、メンバーも自分の成長を実感してしまうから憎めない。そんな中間管理職者の後藤隊長には、実在のモデルが存在します。

小説版も担当した押井監督によれば、モデルとしてスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーを参考にしたとのことです。「もののけ姫」のタイトルは監督に黙って勝手に発表したとか、その数々のエピソードを聞くと、筆者は、「なるほど」と一人納得してしまいました。

この映画は、管理職者に焦点を当てた作品としても素晴らしいですが、日本の安全保障問題とテロに対する首都の危機管理をテーマにしており、四半世紀も前の作品にもかかわらず、未だに先鋭的な社会派作品になっています。大人の鑑賞に耐えるアニメ「機動警察パトレイバー2 the movie」、オススメです!