マネージャーよ、もう二度と部下に指示を与えるな

組織マネジメント

効率的で統率のとれた組織の典型といえば、軍隊組織があげられます。圧倒的なトップダウン体制で、組織の構成員に求められるのは、言われた事を的確に効率よく達成することです。

「部下に指示を出すのが上司の役目だ。」
この言葉はある経営者がマネジメントについて尋ねられて答えた言葉です。

『生産力』という観点から考えると、この組織体制は非常に有効です。高度経済成長時代の日本企業の強みは、まさに、この点にあったのではないでしょうか。

しかし、『生産性』という観点から考えてみるとどうでしょうか?
マネージャー、管理職者は、ただ単に部下に指示を与えるだけでよいのでしょうか?

本記事では、創造性と生産性について注目し、課題と目標定義、その達成のため正しく指示をすることの重要性について論じます。

デキる人材は、命令が嫌い

21_(4).jpgデキる人材は、何かしろと命じられてもレスポンスが良くありません。

このデキる人材とは、皆さんの会社に、数年に一度の頻度で現れるような優秀な人材のことです。同期はもちろん、入社が自分より数年早い人材よりも、高いパフォーマンスを発揮します。

彼らが、優秀で仕事を振りやすいからといって、タスクを指示してしまうと、「何故、こんな簡単な仕事ばかり指示されるんだろう?」「タスク自体は楽でいいんだけど、指示を受けた分、報告とフィードバックに無駄な工数が増えるなあ」と、彼らのやる気を削いでしまうかもしれません。

優秀な彼らを、彼らの自主性の下に、チャレンジしがいのある難易度の高い仕事を任せたり、さらに優秀な人材と一緒に仕事をさせてみましょう。

自主性を尊重することは、彼らのパフォーマンスをさらに伸ばし、創造的なビジネスマンになってもらう上で必要不可欠です。

デキる社員には創造性を高めてもらおう

21_(3).jpgデキる人材が管理職者のサポートに徹してしまうと、創造性向上の機会損失につながります。実は、これが組織の生産性に大きく関わってきます。

「生産力」と「創造性」は、ある意味対立する概念です。
まかせたタスクを順序立てて、決められた時間内に仕事をこなせる人は、「生産力」が高いといえるでしょう。彼らはサポートする仕事が得意です。

一方で、「創造性」の高い人物は、一見すると仕事に関連性のないような、広くて深い知識から、ある程度の期間をかけて、プロジェクトのアウトプットが既存値から10倍にも100倍にもなるようなイノベイティブな発想が出来ます。

これにより、「生産性」は高まります。「生産性」を高めるには、少ない投資で大きなリターンを狙い、同じアウトプットでも、その成果を出すのにどれくらいの時間や人的資源、コストをかけたかを見なくてなりません。

グーグルは、自分の好きなことに仕事の時間を使える20%ルールを採用しています。

これは有能な人材を、日々与えられた業務に縛り付けず、社員の創造性を高めようとする試みの一つです。この20%ルールからは、Gmail、Googleマップ、Googleサジェスト機能が生まれ、この創造性を高めようとする施策からは、莫大な成果がもたらされました。

課題と目標を定義し共有せよ

21_(1).jpg課題と目標を定義して共有しないと、マネージャーと部下の隔たりが深くなってしまいます。

言わずもがなですが、「目標」とは、目的を達成するために設けた目当てで、「課題」とは、目標を達成するために超えなければならない壁のようなものです。

これらを共有せずに、チームが、方向性を見失わずに、まとまってゴールに到達することは不可能です。管理職者・マネージャーは課題と目標設定が必要不可欠であり、それを、チームに浸透させなければなりません。

そのために、マネージャーは何を意識すべきでしょうか。マネージャーが自分自身に問いかけるべき5つのポイントを以下に提示します。


マネージャーが自分に問いかけるべき5つの質問

① 問題があると決めつけていないか?
そもそも、目に見える、数値として現れていない観察結果から「問題がある」、と決めつけていないでしょうか?また、個人のタスクに介入しすぎてしまうと、チームから自主性がなくなってしまいます。

② 自分自身で答えられるか?
部下に頼る前に、その問が自分自身で解決可能か問いかけましょう。もし、自分の判断が正しいか分からない場合は、専門家に聞いてみることも必要です。部下は、あなたの時間を節約してくれる道具ではありません。

③ チームの仕事の助けになるか?
チームメンバーの仕事の進め方に関する提案や考えを考慮しましょう。デキる社員は管理者と同じ考えとは限りません。

④ 自分の独自の知見を正しく共有できているか?
チームメンバーに自分の経験から培った知見を伝える時は、その重要性や背景を把握してもらってからやって欲しいと伝えましょう。優秀な人材ほど、「なぜその知見が重要か」が理解できない限り、その知見を受け入れ、活用することはないでしょう。

⑤ 問題を明確にし、目標を定義したか?
自分が問題と目標を明確にしていないと、チームに訂正、調整、最適化といった余計なフィードバックが増えてしまいます。

マネージャーは、単に部下に仕事を頼むのではなく、課題と目標を定義し、その達成に結びつく正しい頼み方を心がけましょう。

バイアスを捨て創造性を育てよう

いまだ、日本企業には、トップダウン型で、明確な指示と細かな進捗確認で、リーダーが求める型にはめるようなマネジメントが多いのが現状なのではないでしょうか。

しかし、その方法では、本当に有能な、“デキる”社員を生かす事ができず、創造的な仕事をさせることができません。上記の学びを有効に活用し、これからのマネジメントに役立てて頂けたら幸いです。

管理職者は、ゴールを見失わずに、「目標を達成するためには、こうでなければならない!」というバイアスを拭い去り、自分のチームに適切なマネジメントを柔軟に選択していかなければなりません。

参考文献

Management is not about asking people to do stuff(Steven Sinofsky in Learning By Shipping)

生産性 マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの 伊賀泰代(ダイヤモンド社)